AIが数秒で曲を生成できる時代になり、JASRACは人間の創作的寄与が認められる作品のみを管理対象とし、米国著作権局も完全にAIが生成した作品は保護しないと明言しています。一方で、Suno AIの無料プランで作った曲の権利は運営会社に帰属し商用利用もできないなど、サービスごとに条件が分かれ、自分の曲が自分だけのものとは限らない場面が生まれています。公開前の今、あなたの制作物のどこに人間の創作が宿っていると言えるでしょうか?この記事を読むと、JASRACと海外の判断基準の共通点、主要サービスのプラン別の権利帰属と商用利用の可否、公開前に自社資料で確認すべき3つの注意点が分かり、自分の楽曲をどう扱うかを判断できます。
この記事は、総合解説「AI著作権は文化庁の考え方でどう整理?学習と生成の2段階」の詳細編です。全体像はそちらをご覧ください。
この記事の要点
(最終更新:2026年10月18日)
あなたのAI時代適応度は?
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AIが作った曲の著作権、結局誰のものになるのか
図:AI生成曲の著作権判断:人間の創作的寄与の有無(出典:[2][6])
AIが作った曲の著作権は、現時点では「人間の創作的寄与があるかどうか」で判断する考え方が中心です。日本音楽著作権協会(JASRAC)は、AIを利用した作品のうち、人間の創作的寄与が認められるものを管理対象としています[2]。一方、シンプルな指示に基づいてAIが自律的に生成した歌詞や楽曲のように、人間の創作的寄与が認められない作品は管理しません[2]。JASRACに作品を届け出る委託者には、人が創作的に寄与した著作物であることを保証する義務があります[2]。

この整理は海外でも同じ方向にあります。米国著作権局は2025年1月の報告書で、人間の著作者性が著作権保護の根幹であり、完全にAIが生成した作品は保護されないと明言しました[6]。プロンプトが詳細であっても、プロンプトだけでは著作者性を生まないとしています[6]。
つまり、作詞を自分で書く、メロディや構成を練り直す、編曲やミックスで仕上げるといった表現に関わる行為があるほど、その部分は保護され得ます[6]。AIはあくまで道具で、人間が創作の主体という考え方が共通の方向性です[6]。どこまでが自分の手による表現なのか、制作の過程を説明できるようにしておくことが、これからの音楽づくりでは役に立ちそうです。
Suno AIの規約では、自分の作品の権利はどう扱われるのか
図:プラン別の楽曲権利と商用利用の流れ(出典:[1][5])
Suno AIでは、利用プランによって生成した楽曲の権利の扱いが分かれます。無料プランで生成した楽曲の著作権や所有権はSuno(運営会社)に帰属し、商用利用はできません[1]。有料プランでは生成した楽曲の著作権や所有権をユーザーが持つことができ、商用利用も可能です[1]。ただし、無料プランで作成した楽曲は、後から有料プランに加入しても商用利用はできないため注意が必要です[1]。また、Sunoの利用規約では、ユーザーに全権利を譲渡するものの、機械学習の特性上「著作権の発生を保証しない」とされています[5]。Suno AIは一部の音楽レーベルから著作権侵害で提訴されており、生成された楽曲の権利関係は今後変更される可能性があります[1]。

他のサービスと比べてみましょう。Stable Audioは、有料プランのユーザーが生成した楽曲の著作権を持ち、商用利用が認められます[1]。一方、無料プランでは商用利用に制限があるため、ビジネスでの使用には有料プランへの加入が必要です[1]。Udio AIは、生成された楽曲の著作権をユーザーに帰属させる方針を取っており、商用・非商用を問わず自由に利用できますが、他者の著作権で保護された素材が含まれていないことを確認する必要があります[1]。主要サービスを並べると、有料プランで商用利用可という点は共通するものの、無料プランでの権利帰属や保証の範囲には差があるとされています[1][5]。
自分の作った曲が、実は自分だけのものではないかもしれない——そんな前提に立つところから、音楽づくりは始まります。
JASRACは生成AIの著作権をどう見ているのか
図:JASRACの生成AI著作権への懸念と求める対応(出典:[2])
JASRACは、生成AIと著作権の問題に関する基本的な考え方を2023年7月5日の理事会で決議しました[2]。まず掲げているのが、人間の創造性を尊重し、創造のサイクルとの調和を図る必要性です[2]。生成AIの開発・利用は、創造のサイクルとの調和が取れていれば、クリエイターにとっても文化の発展にとっても有益になり得るとしています[2]。一方で、著作物が人間とは桁違いの規模・スピードで学習利用され、著作物に代替し得るAI生成物が大量に流通すれば、創造のサイクルが破壊され、文化芸術の持続的発展が阻害される懸念を示しています[2]。
次に指摘するのがフリーライド(ただ乗り)の問題です。著作権法第30条の4によって、営利目的の生成AI開発に伴う著作物利用まで原則として自由に認められるとすれば、多くのクリエイターの努力と才能と労力へのフリーライドを容認するものになり、フェアではないとしています[2]。AI開発事業者によるフリーライドが日本では容認されるとする見解が散見されることにも、大きな懸念を抱いています[2]。

さらに、AIには国境がないため国際的な調和の確保が必要だとしています[2]。生成AIの学習に伴う著作物の利用について、著作権を制限する法的枠組みを持つ国はG7の中で日本だけであり、調和の観点から大きな懸念があるとしています[2]。加えて、クリエイターの声を聴き、懸念の解消を図ることも必要だと述べています[2]。
JASRACは、クリエイターが安心して創作に専念できる枠組みの実現に向けて、著作権法第30条の4の改正も含めた抜本的な対応を求めています[2]。現行法の下では、クリエイターは自分の作品を利用してほしくないという意思表示を汲んでもらう機会すら持てないとされています[2]。機械の学習に自分の作品が使われるかどうか、その入り口に立てるかどうかは、案外身近な問題なのかもしれません。
商用利用の前に、自社の資料で確認すべき3つの注意点は何か
図:商用利用前の確認3ステップ(出典:[1])
商用利用の前に、自社の資料で確認しておきたい点は大きく3つあります。まず1つ目は、利用するAIサービスの規約を遵守することです。音楽生成AIの著作権の取り扱いはサービスごとに異なり、無料プランと有料プランで権利の帰属先や商用利用の可否が分かれることがほとんどです[1]。たとえばSuno AIでは、無料プランで生成した楽曲の著作権や所有権は運営会社に帰属し、商用利用はできません[1]。有料プランではユーザーが権利を持ち商用利用も可能ですが、無料プランで作成した楽曲は後から有料プランに加入しても商用利用できないため注意が必要です[1]。Stable Audioも無料プランでは商用利用に制限があり、ビジネスでの使用には有料プランへの加入が必要とされています[1]。自社が契約しているプランと、これから作る楽曲の用途が一致しているかを、規約の原文で確かめる作業が欠かせません。

2つ目は、既存の楽曲に似ていないかを人間が確認することです[1]。生成された楽曲が第三者の著作権を侵害していないかは、最終的に人が耳と目で確かめる必要があります[1]。Udio AIのように、生成した楽曲を商用・非商用を問わず自由に利用できる方針のサービスでも、他者の著作権で保護された素材が含まれていないことの確認が求められます[1]。類似性の判断は機械的な照合だけでは済まない場面もあり、リリース前の確認工程を社内の手順として決めておくと安心です。
3つ目は、音楽の使用範囲を明確化することです[1]。どの楽曲を、どの媒体で、いつからいつまで、どの地域で使うのかを自社の資料に書き残しておくことで、権利関係の変化が起きたときの確認がしやすくなります[1]。Suno AIは一部の音楽レーベルから著作権侵害で提訴されており、生成された楽曲の権利関係は今後変更される可能性があります[1]。前提が動き得るからこそ、使った時点の条件を記録に残す意味があります。契約書や企画書の段階で、この3点を誰が確認するのかを決めておくと、制作の現場も迷わずに進められるのではないでしょうか。
公開前に、あなたの作業でまず何を確かめるか
公開の前に、まず情報の出どころを確かめる段階があります。JASRACは生成AIと著作権に関する基本的な考え方を2023年7月5日の理事会で決議し、公式ページで公表しています[2]。同ページでは、AIを利用した作品のうち人間の創作的寄与が認められるものを管理対象とし、シンプルな指示に基づいてAIが自律的に生成した歌詞や楽曲は管理しないとしています[2]。あわせて、委託者には届け出る作品が人が創作的に寄与した著作物であることを保証する義務があるとされています[2]。つまり、どの部分を自分が書いたのかを説明できる状態にしておくことが、手続きの前提になります。

次に、現行ルールの限界を見ておきます。JASRACは、生成AIの開発のための機械学習は原則として権利者の許諾を得ずに行うことができるとされていると説明しています(著作権法第30条の4)[2]。そのため現行法の下では、クリエイターは自分の作品を利用してほしくないという意思表示を汲んでもらう機会を持つことすらできない、とされています[2]。JASRACが2026年に実施した音楽クリエイター向けアンケートでは、反対・どちらかといえば反対と回答したクリエイターが過半を占めたとされていますが、同条がある限り事業者に声を聴く義務はないとされています[2]。この点は、生成物の権利の話とは別の論点として切り分けておきたいところです[2]。
日本での実務的な意味は、公開の可否を「曲の完成度」だけで判断しないことです。JASRACは著作権法第30条の4の改正も含めた抜本的な対応を求めています[2]。制度が動く前提で、人間が関わった範囲の記録を残しておくと、届け出や説明の場面で困りにくくなります。あなたの作業机の上で、どの指示をAIに出し、どこを自分で直したのか、日付とともに残すところから始めてみてはいかがでしょうか。
編集長の眼
AIが数秒で曲を生み出す時代に、私たちは「誰の作品か」という根源的な問いに向き合っています。料理にたとえるなら、AIは高性能な包丁のようなもので、包丁が料理の作者にならないのと同じく、道具を使った人間の関与が問われるのです。興味深いのは、無料プランで作った曲の権利が運営会社に帰属するという仕組みでしょう。便利さの裏返しとして、私たちは知らないうちに権利を手放しているかもしれません。だからこそ、まず自らが使うサービスの規約を原文で確認し、どの部分を自分が創作したのかを記録する習慣を持つことが大切です。制度は動き続けますが、制作の過程を説明できる状態にしておけば、変化が起きても慌てずに済むはずです。
あなたのAI時代適応度は?
3分で診断・具体的なロードマップを提示
よくある質問
Q. AIが作った曲を配信サイトでリリースしてもいい?
配信の可否は、利用するAIサービスの規約と人間の創作的寄与の有無によります。JASRACは人間の創作的寄与が認められる作品を管理対象とし、認められない作品は管理しません[2]。また、サービスごとに権利帰属や商用利用の条件が異なるため[1]、規約を確認した上で判断する必要があります。
Q. Suno AIで作った曲は商用利用できる?
有料プランであれば、生成した楽曲の著作権や所有権をユーザーが持ち、商用利用も可能です[1]。一方、無料プランで生成した楽曲の権利はSunoに帰属し、商用利用はできません[1]。無料プランで作成した楽曲は、後から有料プランに加入しても商用利用できないため注意が必要です[1]。
Q. AI作曲した曲が既存曲に似ていたらどうなる?
生成された楽曲が第三者の著作権を侵害していないかは、最終的に人間が確認する必要があります[1]。Udio AIのように自由利用を認めるサービスでも、他者の著作権で保護された素材が含まれていないことの確認が求められます[1]。類似性の判断は機械的な照合だけでは済まない場合があり、リリース前の確認工程を決めておくと安心です[1]。
出典・参考資料
- AIで作成した音楽の著作権はどうなる?商用利用の際の注意点まで解説(参照日:2026年10月18日)
- 創造のサイクルとの調和がとれたAI利活用の実現に向けて | JASRAC(参照日:2026年10月18日)
- 音楽×生成AIの完全ガイド|Suno v5の衝撃から著作権問題まで徹底解説 - MatrixFlow(参照日:2026年10月18日)
- AI楽曲の著作権とは?2026年最新ルール・配信可否チェックリスト(参照日:2026年10月18日)
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記事監修: 鈴木隆文
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