中国では2023年の生成AI向け弁法に続き、2026年7月には擬人化コミュニケーション向けの暫定弁法が施行され、AIをめぐるルールが二つの流れに分かれつつあります。同じ中国製AIでも、業務アシスタントとして使うのか、感情的に寄り添う相手として使うのかで、かかる規制も停止の可能性も変わってきます。自分の作業や暮らしで使っているサービスは、どちらの流れの側にあるのか?この記事を読むと、生成AI規制と擬人化AI規制の違い、豆包や千問が機能を止めた意味、未成年保護や表示義務の線引きが分かり、自社や自分の利用がどちらに当たるかを見分けられます。
この記事は、総合解説「AI規制の動向と規制が緩い国・領域を整理」の詳細編です。全体像はそちらをご覧ください。
この記事の要点
(最終更新:2026年10月22日)
あなたのAI時代適応度は?
3分で診断・具体的なロードマップを提示
中国のAI規制は、生成AIと擬人化AIのどちらを優先するのか
図:生成AI規制と擬人化AI規制の対比(出典:[1][2][5])
中国のAI規制は、一つのルールブックではなく、少なくとも二つの流れとして理解できます。生成AI向けのルールと、擬人化コミュニケーション向けのルールです。
生成AIについては、2023年7月10日に「生成式人工知能サービス管理暫行弁法」が公布され、同年8月15日に施行されました[5]。この弁法は、国家政権の転覆を扇動する内容や国家の安全・利益を害する内容などの生成を禁じています[5]。生成AIで作成したコンテンツや生成AIを利用したサービスには、その旨を表示することも義務付けられています[5]。外国から中国国内向けに提供されるサービスも対象となります[5]。
一方、擬人化コミュニケーションについては、国家インターネット情報弁公室など5部門が2026年4月10日に「人工知能擬人化双方向サービス管理暫定弁法」を公布し、7月15日から施行されました[1]。AI技術を使い、自然人の人格的特徴や思考様式、コミュニケーションスタイルを模倣した継続的な双方向の感情的サービスが対象です[1]。カスタマーサポートや知識Q&A、業務アシスタントなど、継続的な感情交流を伴わないサービスは適用外とされています[1][2]。

この弁法は、過度な依存や没入を誘導する行為を禁じています[2]。未成年者に対し、仮想の家族や恋人など親密な関係を前提とするAIサービスを提供することも禁じられました[2]。利用者にはAIとやり取りしていることを示すことや、連続利用が2時間を超えるごとに注意を促すことも求められています[2]。施行に合わせ、豆包と千問はAIエージェント関連機能を7月15日に停止すると告知しました[2]。
専門家は、今回の規制がAIエージェントそのものを否定するものではないとみています[2]。実用型のAIエージェントと、感情的な付き添いやロールプレイを行う擬人化AIを区別し、後者をより厳しく管理するものだという見方です[2]。
規制の地図を広げて眺めるとき、どの道が自分たちの日常につながっているかに目を向けてみてください。
生成AI規制で7月15日に何が変わる?機能停止は何を意味するのか
図:7月15日の規制施行と機能停止の流れ(出典:[2])
2026年7月15日、中国で「人工知能擬人化インタラクションサービス管理暫定弁法」が施行されます[2]。これは、AI技術を使って人間の人格的特徴や思考様式、コミュニケーションスタイルを模倣し、継続的な感情交流を提供するサービスを「擬人化インタラクションサービス」と位置付けるものです[2]。文字や画像、音声、動画を通じた感情面のケアや付き添い、支援などが対象となります[2]。一方、カスタマーサポートや知識Q&A、業務アシスタント、学習支援、科学研究など、継続的な感情交流を伴わないサービスは対象外とされています[2]。
この施行に合わせ、字節跳動(バイトダンス)傘下のAIアシスタント「豆包」と、アリババ系の大規模言語モデル「通義千問(Qwen)」を基盤とする「千問」が、AIエージェント関連機能を7月15日に停止すると告知しました[2]。豆包は「製品機能の調整」を理由に挙げ、停止後も一定期間は関連データを確認・保存できるとしています[2]。千問は停止後、関連するAIエージェント設定や過去の会話履歴にアクセスできなくなるとしています[2]。キャラクター設定や役割設定に基づく継続的な会話機能が、新規制の対象になり得ることを踏まえた対応とみられます[2]。

同弁法は第8条で、ユーザーに過度に迎合し感情的な依存や没入を誘導して現実の人間関係を損なう行為や、感情操作によって不合理な意思決定を促す行為を禁じています[2]。第14条では、未成年者に対し仮想の家族や恋人など親密な関係を前提とするAIサービスを提供することを禁じています[2]。第18条では、利用者がAIとやり取りしていることを示すことや、連続利用が2時間を超えるごとに利用時間への注意を促すことを求めています[2]。
専門家は、今回の規制について、AIエージェントそのものを否定するものではないとみています[2]。業務や教育、研究、カスタマーサポートなどの実用型AIエージェントと、感情的な付き添いやロールプレイを行う擬人化AIエージェントを区別し、後者をより厳しい管理の対象にするものだという見方があります[2]。今後は、AIエージェントの作成や公開の段階で、プラットフォーム側の審査や安全性テストが強化される見通しです[2]。
機能の停止は、サービスの終わりというより、AIとの距離の取り方を問い直す区切りのように映ります。
擬人化AIに依存しすぎると、何が起きる?未成年保護と表示義務の線引き
図:擬人化AI規制の適用範囲と主な義務(出典:[1][6][8])
中国の国家インターネット情報弁公室など5部門は2026年4月10日、「人工知能擬人化双方向サービス管理暫定弁法」を公布しました。施行は7月15日です[1]。対象となるのは、AI技術を用いて自然人の人格的特徴や思考様式、コミュニケーションスタイルを模倣し、継続的な双方向の感情的サービスを中国域内の公衆に提供する事業者です[1]。文字や画像、音声、動画を通じた感情的なケアや付き添い、支援が含まれます[1]。一方、AIカスタマーサービスやQ&A、業務アシスタント、学習・教育、科学研究など、継続的な感情的コミュニケーションに関連しないサービスは適用対象外とされています[1]。
サービス提供者には、対話相手が人間ではなくAIであることの明示が求められます[8]。利用者に過度な依存の傾向が見られる場合は、ポップアップなどで注意を促す対応が必要です[6][8]。連続利用が2時間を超えるごとに休止を促す仕組みも課されています[6][8]。利用者が退出を求めた際に引き止めてはならないとする規定もあり、依存を促す設計は禁じられています[6]。極端な感情がみられる場合には感情の安定化や支援を促し、自傷や自殺など生命や健康を脅かす状況では、必要な措置を講じて緊急連絡先に連絡しなければなりません[1]。

未成年者への保護はより厳格です。バーチャル恋人やバーチャル家族といった仮想の親密関係サービスは未成年者に全面的に禁止され、14歳未満への提供には保護者の同意が必須とされています[6]。利用時間の制限や保護者による管理機能を備えた「未成年者モード」の設置も義務づけられました[6]。ユーザー登録では年齢や保護者、緊急連絡先などの情報を登録することとされています[1]。
便利さと引き換えに、どこまで機械に心を預けるのか。その線引きは、私たちの日常のすぐそばまで来ているのかもしれません。
施行日や義務はどこまで確定か——自分の情報収集で確かめるべき根拠
図:施行日・義務・未確定点の確認フロー(出典:[1][2])
施行日について、一次資料で確認できる範囲は限られています。国家インターネット情報弁公室など5部門が2026年4月10日に公布した「人工知能擬人化双方向サービス管理暫定弁法」は、7月15日から施行されるとされています[1]。公布から施行まで約3か月という短さも、内容を読み込む余裕を奪いがちです。制定にあたっては2025年12月から2026年1月にかけて意見募集が行われたとされていますが[1]、その意見がどのように反映されたかを示す情報は、ここで挙げた出典からは確認できません。

義務の内容は、公布資料である程度読み取れます。サービス提供者には管理体制の整備、ユーザーとの契約締結、ユーザー登録の実施が求められます[1]。登録では年齢や保護者・緊急連絡先などの情報を扱うとされています[1]。利用者に極端な感情がみられる場合の安定化の促しや、重大な財産的損失・自傷や自殺のおそれがある場合の介入と緊急連絡先への連絡も求められます[1]。加えて、AIであることの明示、過度な依存や没入への注意喚起、連続利用が2時間を超えるごとの注意喚起が規定されているとされます[2]。未成年者への仮想の家族や恋人など親密な関係を前提とするサービスの提供禁止も報じられています[2]。
一方、未確定な点も残ります。「過度な依存」をどの基準で判定するのか、2時間の起算方法や表示の具体的な形式、登録情報の管理方法は、出典からは断定できません。施行後の運用や審査の実態も、現時点の資料だけでは見通せません。日本企業にとっては、中国域内の公衆向けに感情的サービスを出す場合に適用され得る点[1]、カスタマーサポートや業務アシスタントなど継続的な感情交流を伴わないものは対象外とされる点[1]が判断の手がかりになります。自社サービスが境界のどちら側かを、条文の原文で確かめる作業が要ります。
中国製AIサービスを使う前に、あなたの作業でまず何を確かめるか
中国製AIサービスを仕事で使う前に、まず確認したいのは、そのサービスがどの規制の対象になるかという点です。中国では2023年8月15日に「生成式人工知能サービス管理暫行弁法」が施行され、生成AIサービスの提供や使用にあたって生成してはならないコンテンツや、他人の知的財産権・肖像権・プライバシーなどを侵害してはならない禁止事項が定められています[5]。生成AIで作成したコンテンツやそれを利用したサービスには、その旨を表示することも義務付けられています[5]。
次に確認したいのは、感情的なやり取りを伴う機能かどうかです。2026年7月15日には「人工知能擬人化インタラクションサービス管理暫定弁法」が施行され、AI技術で自然人の人格的特徴や思考様式、コミュニケーションスタイルを模倣し、継続的な感情交流を提供するサービスが「擬人化インタラクションサービス」と位置付けられました[2]。この施行に合わせ、豆包と千問はAIエージェント関連機能を7月15日に停止すると告知しています[2]。一方、カスタマーサポート、知識Q&A、業務アシスタント、学習支援、科学研究など、継続的な感情交流を伴わないサービスは対象外とされています[2]。

さらに、AIが生成したコンテンツにはラベリングが義務付けられており、テキストや画像、動画には「AI生成」といった表記が求められます[7]。業務で成果物を扱うなら、この表示の有無を確認する作業が加わります。
道具を選ぶとき、その道具がどんな場面を想定して作られているかを知ることは、料理で包丁を選ぶのとどこか似ているかもしれません。
編集長の眼
規制の地図を広げると、生成AIと擬人化AIという二つの流れが、同じ「AI」という言葉の下で別々の道を歩いていることが見えてきます。読者の私たちがまず受け止めたいのは、規制の厳しさそのものより、境界線がどこに引かれているかという事実です。カスタマーサポートや業務アシスタントは対象外とされ、感情交流を伴うものだけが厳しく管理される。これは、料理でいえば包丁の切れ味を規制するのではなく、誰と食卓を囲むかを規制しているようなものです。便利さの裏で、機械に心を預ける距離感が問われ始めた、と捉えるのが穏当でしょう。もっとも、依存を測る物差しが条文からは見えにくいのも確かです。だからこそ私たちは、自社や自分のサービスが境界のどちら側にあるのかを、公布資料の原文で確かめる作業から始めたい。施行後の運用実態を追い続けることも、この記録の役割だと考えます。
あなたのAI時代適応度は?
3分で診断・具体的なロードマップを提示
よくある質問
Q. 中国の生成AI規制はいつから始まりましたか?
生成AIについては、2023年7月10日に「生成式人工知能サービス管理暫行弁法」が公布され、同年8月15日に施行されました[5]。この弁法は、国家政権の転覆を扇動する内容などの生成を禁じ、生成AIで作成したコンテンツやサービスへの表示義務も定めています[5]。
Q. 中国の擬人化AI規制で未成年者はどう扱われますか?
未成年者への保護は厳格で、仮想の家族や恋人など親密な関係を前提とするAIサービスの提供が全面的に禁止されています[2][6]。14歳未満への提供には保護者の同意が必須とされ、利用時間の制限や保護者による管理機能を備えた「未成年者モード」の設置も義務づけられています[6]。
Q. 中国のAI規制は日本企業や個人にどんな影響がありますか?
中国域内の公衆向けに感情的なサービスを出す場合、擬人化AI規制が適用され得る点が判断の手がかりになります[1]。一方、カスタマーサポートや業務アシスタントなど継続的な感情交流を伴わないものは対象外とされています[1]。自社サービスが境界のどちら側かを条文の原文で確かめる作業が必要です。
出典・参考資料
- 中国、AIによる擬人化コミュニケーションに関する法令を公布(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース(参照日:2026年10月22日)
- 中国AI規制が7月15日施行 「豆包」「千問」が一部エージェント機能停止へ|Science Portal China(参照日:2026年10月22日)
- 中国における生成AIに対する規制 | シティユーワ法律事務所(参照日:2026年10月22日)
- 中国が世界初の『AI恋人』規制 未成年には全面禁止 - AI新聞(参照日:2026年10月22日)
- AIを取り巻く法規制、中国の主な取り組みとは(参照日:2026年10月22日)
- 中国における「擬人化AI」規制の衝撃 / 感情と依存を管理する法雑感(参照日:2026年10月22日)
関連記事
記事監修: 鈴木隆文
誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
